認知症リスクに備える相続対策 家族信託の活用
2017/05/17認知症リスクに備える相続対策 家族信託の活用について
高齢化社会を迎えて認知症になるリスクも増してきています。
一旦認知症になってしまうと、その後の相続対策が一切できなくなってしまいます。
いつなるか分からない認知症リスクに備える方法はいくつかありますが、今回は家族信託の活用について見て行きましょう。
認知症になってしまう前に成年後見制度を利用していても限界があり、万全の相続対策ができないこともあります。
まず、信託とは、財産の所有者である「委託者」=(託す人)が、「受託者」=(託される人)に財産を託し、「受益者」=(利益を得る人)がその財産や利益を得られる仕組みで、「受託者」=(託される人)が財産の管理や処分などをする制度です。
平成19年に新しい信託法が施行されるまでは、信託業の免許を持つ信託銀行等が行う商事信託がほどんどで、その場合には受託者は信託銀行等でした。
新しい信託法では、営利を目的とせず特定の人から単発的に信託を受託する民事信託(いわゆる家族信託)が積極的に活用できるようになったため、相続や事業承継対策のツールとして注目されるようになりました。
資産を所有する本人が「委託者」、信頼できる家族等が「受託者」、主に本人が「受益者」となる場合が多いですが、その他にもいろんなケースに活用が可能です。
但し、「委託者」=(託す人)である本人の意思能力があるうちにこの制度を始める必要があります。
例えば、賃貸マンションを所有する父が委託者、長男が受託者、受益者を父とします。賃貸マンションの管理や運用及び処分権限は長男に移り、家賃等の収入を得るのは受益者の父です。信託契約締結後に父が認知症になった場合でも、長男の判断で賃貸マンションの修繕・管理や相続対策等が可能です。委託者である父の相続が発生した場合は、賃貸マンションの名義を受託者の長男とすること等も信託契約に盛り込めますので、遺言書の機能も併せ持ちます。この例に限らず、受託者や受益者を孫にするなど自由に決めておけます。

【家族信託活用の注意点】
- 不動産は受託者への所有権移転登記が必要となり、登記費用等が発生する。
- 受託者は財産が受託者名義になっても利益を受けた訳ではないため、贈与税や不動産取得税はかからない。
- 同世代の妻や兄弟を受託者にすると受託者の認知症リスクがあるので、子供等の若い世代を受託者とする。
- 第三者に説明ができるように信託契約を公正証書で作成することが望ましい。
- 家族信託の歴史が浅く実務の専門家が少ない為、実務に強い専門家を見つけるのが難しい。
- 信託契約により、預金通帳を受託者名義で作成する場合、対応可能な金融機関が限られている。
- 受託者が相続対策で収益マンション建築や購入する際、金融機関から融資を受けることが難しい。
【家族信託活用のメリット】
- 成年後見制度より柔軟な財産管理が可能となる。
- 遺言よりも確実に次の世代に財産が継承でき、円滑な事業承継ができる。
- 遺言では不可能だった二次相続以降の財産の承継先も指定することが可能となる。
- 委託者と受託者との合意で信託契約締結可能で、締結と同時に効力があるために、すぐに受託者が財産管理等を始められるので、認知症リスクが想定される急ぎの場合でも間に合う。
- 財産の名義が受託者になるため、委託者が悪徳商法等に遭うことなく財産が守れる。
- 信託した財産は独立性があり、委託者の破産や受託者が破産しても信託された財産は守られる。
信託の仕組みは難しい面が多いため、家族だけで家族信託を行う場合でも、信託の実務に強い弁護士・司法書士等の専門家に必ず相談してください。
そのような弁護士・司法書士がお知り合いにおられない場合は、信託実務に強い専門家をご紹介させて頂きますのでお気軽にご相談ください。
家族信託には、成年後見制度や遺言にはないメリットもたくさんあります。高齢や判断能力低下が心配される方は、認知症リスクに備える相続対策として、家族信託の活用を検討されることをお勧め致します。





